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【2021年12月時点】コロナウイルスの影に潜む、経営を逼迫する他の要因とは

レポート

M&A


今回は、中小企業における直近期の業況について、3ヶ月毎に区切り、2021年7-9月と2021年10-12月の数値を比較しながらみていきたいと思います。

まず、10月~12月においては、7月~9月に比べ、全国的にコロナウイルス感染者が顕著に減少しました。

そのような中、2021年7月~9月と10月~12月の業況を比較してみるとコロナウイルス以外の経営を逼迫する別の要因が、浮き彫りになってきました。

一体それはどのようなものなのでしょうか。早速見ていきましょう。

※本編は中小企業庁による中小企業景況調査の2021年7-9月期並びに2021年10月-12月期の調査報告をもとに作成しています。

1.はじめに、全産業を通して

全産業を通してみると、2021年7-9月に比べ、2021年10-12月の景況は改善傾向を示しています。(中小企業の業況判断DIは+5.1ポイント)

※用語説明「DI」とは

例えば前年同期と比べた今期の状況、前期と比べた今期の状況あるいは、今期と比べた来期の見通しにおいて「増加(上昇、好転)」企業割合から「減少(低下、悪化)」企業割合を差し引いた値です。

具体的には、今期の売上額を前年同期と比較した結果、
「増加」企業割合が30%、「不変」企業割合が60%、「減少」企業割合が10%とすると、
DI値は、30-10=20となります。

2.業種別の景況

業種別にみると、製造業の中で業況が改善したのは以下の3種です。

・ 食料品
・ 窯業・土石製品
・ 家具・装備品

一方、製造業で業況が悪化したのが以下11種です。

・ 化学
・ 繊維工業
・ 木材/木製品
・ パルプ・紙・紙加工品
・ 印刷
・ 鉄鋼・非鉄金属
・ 金属製品
・ 機械器具
・ 電気・情報通信・機械器具・電子部品 ・ 輸送用機械器具
・ その他製造業

非製造業においては、以下の通りすべての業種において業況が改善しました。

・ サービス業
・ 小売業
・ 卸売業
・ 建設業

3.改善傾向の非製造業における、売上高と経常利益

続いて、すべての業種において業況が改善の傾向を表した、非製造業に注目してみていきます。

【表1】【表2】をご覧ください。売上/経常利益どちらも2021年7-9月に比べて改善していることが伺えます。

【表1】中小企業の売上額DI

表1
(プラスは増加―マイナスは減少 前期比季節調整値)

【表2】中小企業の経常利益DI

表2
(プラスは好転―マイナスは悪化 前年同期比)

4.経常利益が伸びない背景とは

前述の表より、経常利益は思うように伸びていません。もちろん、営業利益から営業外損益を差し引いているので、要因が一過性である企業もいるかと思いますが、4業種すべてにおいて、伸びていない状況です。

これは、単に企業ごとの個々の事情とは別の要因がありそうです

その要因とは、一体何なのでしょうか。

5.経営を逼迫する、喜べない大幅な伸び率

それは、大幅な仕入れ単価の高騰です。【表3】をご覧ください。

【表3】中小企業の商品仕入れ単価DI

表3
(プラスは上昇―マイナスは低下 前年同期比)

上記の通り、4業種すべてにおいて、大幅に仕入れ単価が高騰していることが読み取れます。仕入単価の高騰は、原油価格の高騰などに起因しています。

「仕入れ単価の高騰→止む負えない売値の値上げ」を実施する企業が増えるものの、そこに利益率まで思ったように上乗せできていないという企業も多いのではないでしょうか。

身近な話としては、ニュースでも多く取り上げられている食品の値上げが思い出されます。

物価高騰は、ポジティブな話ではありませんが、経営者の方々も苦渋の決断をされて、値上げに踏み切ったことを考えると、やむを得ないことと思います。

コロナ禍という状況が緩和された後も、価格高騰は続く傾向にあります。経営者の方へは、中長期的な動向を見据えた上での企業戦略が求められていきそうです。

執筆者
デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
イノベーション FAプラットフォーム
アナリスト 櫻井 桃子

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