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令和2年度(2020年度)診療報酬改定にみる薬局M&A(中編)

2020/07/31
M&A

前編では、令和2年度(2020年度)の診療報酬改定の流れと概要を説明しました。令和2年度(2020年度)の診療報酬改定率おいて、診療報酬(調剤)は+0.16%に対して、薬価は▲0.99%、材料価格は▲0.02%となりました。
中編では、令和2年度(2020年度)報酬改定の中でもポイントとなる「かかりつけ評価」と「対物業務から対人業務への構造的な転換」における具体的な診療報酬点数について確認します。

3. かかりつけ機能の評価

図表5 令和2年度(2020年度)診療報酬改定 個別改定項目

図表5は、「かかりつけ機能の評価」に関する個別改定項目です。

診療報酬は点数で表示されていますが、薬局の収入はその点数に10を乗じたものになります。つまり、薬局にとっては、点数が上がれば、収入が増えますし、点数が下がれば、収入が減ります。新設された項目は、新たな収入源になるわけです。

(1)「重複投薬解消に対する取組評価」は、[同一患者への重複投薬をなくすことを目的に]新設された項目です。この項目は複数の疾患を抱えてそれぞれの医療機関に通う患者にとっては効率的な取り組みだと言えます。また、調剤医療費の観点から考えると、重複投薬による無駄なコストが解消できます。

(2)「かかりつけ薬剤師指導料等の評価」は、[文字通りかかりつけ薬剤師の増加を企図しており]、対物業務から対人業務への構造的な転換を進めるうえで、根幹的な取り組みです。施設基準では、患者との会話が他者へ漏れないようにパーテーション等で区切るような患者のプライバシーに配慮することが新設されています。

(3)「同一薬局の利用推進」は、患者の服用薬を一元的に把握するために欠かせない取り組みになります。薬剤服用歴管理指導料の点数が低くなる規定については、再度対局期間が「原則6ヵ月」から「原則3ヵ月」へ短縮されるため、厳しくなったと言えます。また、その対象が調剤基本料2、調剤基本料3にも拡大されるため、中堅・大型の薬局は少なからず影響を受けるでしょう。調剤基本料については、後ほど説明します。その他の薬剤服用歴管理指導料においては、薬局と医療機関との連携強化のための規定が追加されています。

手帳の有無でも点数が異なり、手帳有の方が点数は低く設定されています。これは患者の視点から考えられた設定です。点数が低ければ、患者が支払う費用も低くなりますので、患者にとっては手帳を持ってくるインセンティブになるわけです。

(4)「地域支援体制の見直し」は、実績要件において調剤基本料1では要件が強化されています。一方で、調剤基本料2、調剤基本料3では、一部要件が緩和されています。調剤基本料の詳細については、「対物業務から対人業務への構造的な転換(対物業務等の評価の見直し)」で説明します。

以上の改定内容は、薬局は患者にとってさらに身近な存在になることを求められているといえるでしょう。

4. 対物業務から対人業務への構造的な転換(対人業務の評価の拡充)

図表6 令和2年度(2020年度)診療報酬改定 個別改定項目

図表6は、「対物業務から対人業務への構造的な転換(対人業務の評価の拡充)」に関する個別改定項目です。これらの新設された項目は、薬局にとって新たな収入源になります。今回は患者に対する医療の質を向上させるためのコンサルティングに対して、評価する内容です。薬局が患者へのフォローアップ体制を構築し、医療機関との連携を図ることによって質の高い医療を実現させるための取り組みの一環だといえます。今回新たに設けられた評価項目は、その実現に向けて薬局に対してインセンティブが付与されたかたちです。

5. 対物業務から対人業務への構造的な転換(対物業務等の評価の見直し)

図表7 令和2年度(2020年度)診療報酬改定 個別改定項目

図表7は、「対物業務から対人業務への構造的な転換(対物業務等の評価の見直し)」に関する個別改定項目です。

「調剤料(内服薬)の見直し」では、年々点数が下がっています。つまり、薬局にとっては減収要因のひとつになります。

今回の「調剤基本料の見直し」においては、テーマが2つあります。一つは「処方箋の集中率が著しく高い薬局)」、もう一つは「同一敷地内薬局」です。順を追って説明します。

調剤基本料とは、処方箋受付ごとに算定できる点数であり、調剤における基本的な手数料です。調剤基本料1は42点と一番高く、特別調剤基本料は9点と一番低くなっています。これらの点数の差は33点であり、1点を10円として計算するので、調剤基本料1は特別調剤基本料よりも330円多く収入を得る仕組みです。このように薬局側からすれば、点数が高ければ高いほどメリットがあります。

薬局が取り扱う処方箋枚数と処方箋の集中率によって、調剤基本料の区分が決まります。

① 処方箋の集中率が著しく高い薬局

処方箋集中率とは何でしょうか。計算式で示すと以下の通りです。

処方箋集中率 = 主たる医療機関に係る処方箋受付回数 / 全処方箋受付回数

厚生労働省「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」において、処方箋回数は「前年3月1日から当年2月末までの1年の処方箋受付回数の実績をもって施設基準の適合性を判断し、当年4月1日から翌年3月末までの所定点数を算定する。」とあります。つまり、処方箋集中率は、前年3月1日から当年2月末までの実績で計算されます。

今回の診療報酬改定では、調剤基本料2に「処方箋受付回数 月1,800回超~2,000回、処方箋集中率95%超」の施設基準が新設されます。例えば、1ヶ月の営業日を25日とする薬局で考えた場合、1日当たりの処方箋受付回数が72回を超える門前薬局は、これに該当する可能性があります。

門前薬局とは、病院・診療所の付近にあり、主にそこからの処方箋が多くを占める調剤薬局をいいます。

調剤基本料1(42点)から調剤基本料2(26点)になると収入への影響はどうなるのでしょうか。

図表8 令和2年度(2020年度)診療報酬改定による調剤基本料のシミュレーション

調剤基本料だけでも月間で288,160円、年間で3,457,920円の減収になります。経営者の高齢化も相まって、このような診療報酬改定による経営悪化を機にM&A(企業譲渡)を検討されることも想定されます。

② 同一敷地内薬局

これまでは医療機関と同じ建物や敷地に薬局を併設することは禁止されていましたが、患者の利便性向上を目的として、2016年10月1日に規制が緩和され敷地内薬局が認められるようになりました。

図表9 敷地内薬局(医療機関と薬局の建物上のイメージ)

敷地内薬局は図表9で示した通りです。矢印が出入口を示しています。建物の出入口を医療機関と薬局がそれぞれ別に設けることで、敷地内薬局が認められています。通路が建物外にあっても、それを囲い等により外部から入れない構造は認められません。

(1)は同じ建物ですが、出入口を別に設けています。(2)は同じ敷地内ですが、建物を分けています。(1)と(2)は問題ないわけですが、(3)のように出入口を同じ建物、敷地内で繋いでいる場合は認めらません。利用者からすると不便に感じると思いますが、このようなルールがあるため出入口が分かれています。

敷地内薬局において医療機関とは別物であることが大前提ですが、不動産取引上の関係では、医療機関は貸手であり、薬局は借手となります。医薬分業の原則から考えると、そこには独立性の問題が浮かび上がってきます。

令和2年度(2020年度)診療報酬改定では、敷地内薬局向けの特別調剤基本料は対象範囲が拡大し、点数が引き下げられています。特に対象範囲の拡大における要件が印象的です。「病院である保険医療機関」から、「保険医療機関」へ改定されています。つまり、対象範囲が改定前までは病院だけでしたが、診療所の敷地内薬局も対象に追加されるということです。また、処方箋集中率も95%超から70%超に引き下げられています。敷地内薬局は、病院、診療所の敷地内にあるので、他の医療機関からの処方箋受付をあまり望めないため、処方箋集中率を下げることは難しいでしょう。

このように、薬局においては診療報酬改定が業績に大きな影響を与えます。M&Aを検討するうえでも、これらの改定をしっかりと理解し、投資判断をすることが求められます。後編では、薬局M&Aのポイントを整理します。

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