おもちとM&A
事業継承
皆様は鏡餅がなぜ2つ重なっているか、なぜその上にみかんが乗っているのか、考えたことはございますか。年末年始ということで、今回は鏡餅について解説していきたいと思います。
1. 鏡餅について
鏡餅は年神様の拠り所とされており、松の内(一般的には1月7日ころまで)の間は神様の魂が宿るとされています。鏡開きの日にその魂が宿ったおもちをいただくことで、運気や力を分けてもらうとともに1年の無病息災を願う意味があります。太古より鏡には魂が宿るとされていたことから、丸いおもちを鏡に見立て「鏡餅」と呼ばれるようになったといわれています。
大小2つのおもちには「円満に新たな1年を重ねる」という意味があります。新しく迎えた1年に希望を込めて、おもちを重ねているのです。また、その上のみかん/橙(だいだい)には「子孫が代々繁栄するように」との意味があります。一見丸みを帯びたものが3つ重なって愛らしくも見える鏡餅には、大切なものを末永く守っていきたいという、切実な思いが込められているのです。
2. 筆者の経験則
私はこれまで、幾多の企業に年末年始のご挨拶をさせていただきましたが、普段から従業員・お客様を大切にしていらっしゃると強く感じる先にはある共通点があると思っています。それはどの企業も正月飾りが大変立派であるということです。門松やしめ縄はもちろんですが、鏡餅をも全て手作りでご準備されている方もいらっしゃり、強く感銘を受けます。私は決まって「今年も立派なものを飾っていらっしゃいますね」とお伝えするのですが、返ってくる反応は共通して「大切な会社ですから」といったものです。大切な会社、従業員、お客様の繁栄への願いを正月飾りに込めている経営者様の姿を見ると、心を打たれます。
3. 鏡餅と第三者承継
そのような強い思いを持った経営者がいらっしゃる一方で、日本国内では中小企業を取り巻く大きな課題が顕在化しています。それは、経営者の高齢化です。
現在日本には約380万社の中小企業が存在していますが、経営者の約半数が自身の代での廃業を予定しているとのデータがあります。こちらのグラフでは経営者年齢分布のボリュームゾーンがこの20年で60歳代後半へシフトしてきているのがお分かりになるかと思います。
つまり、国内には従業員・お客様の繁栄を願っている経営者が多く存在するにも関わらず、高齢化の波により事業承継が円滑に進まず、廃業という選択を取らざるを得ない企業が後を絶たないということです。
そのような課題が蔓延する中、直近では「第三者承継」というキーワードが注目されるようになり、国も「経営資源引継ぎ補助金」やM&Aの譲受企業向けの税制優遇を設けるなど、親族外承継の促進を行っています。今後、新型コロナウイルスによる感染症リスクで先行きが不透明となる中、大切な会社を守るための選択肢として「第三者承継」がより注目されることとなりそうです。
私も「M&Aプラス」というお引き合わせの場を提供する立場として、第三者承継を通じて一つでも多くの企業が大切な従業員・お客様を守り、末永く鏡餅に心を込めることができるよう、切に願っています。
執筆者
デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
イノベーション FAプラットフォーム
シニアアナリスト 牟禮 貴史
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