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部屋とYシャツとM&A

基礎知識・ノウハウ

M&A

新型コロナウイルス感染拡大により利用者が増加したサービスの一つに音楽・動画ストリーミングがあります。私も利用頻度が増している一人で、ここもと音楽を聴く時間が多くなっていると実感しています。

先日、ストリーミングアプリのおすすめ曲として平松愛理さんの「部屋とYシャツと私」が流れてきました。始めは聴き流していましたが、次第にこの曲がM&Aに通じるものがあると感じ、気が付けば何度もリピートして聴いていました。

今回は結婚前の女性の気持ちを歌ったこの曲とM&Aの関連性を、契約当事者の気持ちになぞらえて解説していきたいと思います。

1.そもそもどのような曲か

「部屋とYシャツと私」は日本レコード大賞作詞賞を受賞した平松愛理さん最大のヒット曲です。女性が婚約者に宛てて書いた手紙のような内容になっており、結婚に対する期待や喜びと共に、不安や焦燥感を表すフレーズも多く登場し、「私もこれくらい強い覚悟をしているけど、あなたももちろん同じよね」という表現が続きます。優しい語り口ですが、歌詞を真面目に聴くとそれなりに重たい内容だと気付かされます。以降は曲中に登場する歌詞をいくつかピックアップしてM&Aとの関連性を解説していきます。

2.「いつわらないでいて 女の勘は鋭いもの あなたは嘘つくとき右の眉が上がる」

嘘をついても私にはわかるからね、というフレーズで、この後は「毒入りスープを飲んで一緒にいこう」という衝撃的な流れになりますが、M&Aの場合、契約当事者同士は一緒に死ぬわけにはいきません。

M&Aの場合は、当事者間で開示した情報に網羅性があることを担保するために、契約書上で表明保証を行うことが多くあります。

表明保証とは、一般的に契約当事者が、もう一方の当事者に対し、契約内容に関連して一定の事項が一時点において真実かつ正確であることを表明し、内容を保証するものです。仮に表明保証違反が判明した場合は、M&A取引の中止や補償の請求を行うことが可能とされています。

契約に至る過程で、相手方企業の右眉が上がることを見抜くことが難しい場合であっても、契約書上で一定のリスクを回避することが可能になっています。

M&Aの場合は『いつわらないでいて、表明保証条項があるわよ』いう歌詞になるでしょう。

3.「大地をはうようなあなたのいびきも歯ぎしりも もう暗闇に独りじゃないと安心できて好き」

このフレーズには『シナジー』いう概念が浮かびます。シナジーとは、企業同士の統合や協業・連携によって得られる相乗効果を指す用語です。中小企業のM&Aにおいては、それまでむしろ『弱み」だと思っていたことがシナジーによって強みに変わることが多くあります。例えば、限られたエリアにしか顧客がいないことを弱みと感じている企業は、そのエリアに進出したいと考えている企業にとっては非常に魅力的な強みを持っている企業に見えます。

この歌詞に登場する男性も、他の人からすると人間のものとは到底思えない騒音を発するけれど、結婚相手には安心を与えることが出来るのです。二人に今後何かあれば一瞬で騒音に変わりそうな気もしますが、今回は気にしないようにします。

M&A仕様の歌詞にすると『大地をはうようなあなたのいびきや歯ぎしりは、弊社にとって強いシナジーとなりえます」といったところでしょうか。

4.「私はあなたとならどこでも大丈夫」「もし私が先立てばオレも死ぬと云ってね」

ここもだいぶ重たい歌詞ですが、M&Aにおいても、当事者である2つの企業の方針・体制を整理するプロセスは非常に重要です。文化の違う2社が統合するわけですので、先述のシナジーを実現し企業価値を最大にするためにも、経営/業務/意識を出来る限り速やかに統合する必要があります。

この一連のプロセスをPMI(Post Merger Integration)といいます。PMIの検討範囲は、トップマネジメントによる経営ビジョンや組織文化・風土といったソフト的・定性的なものから、事業拠点の統合、クロスセル、業務プロセスの統合等、ハード的・定量的なものまで、まさに企業経営の全領域にわたるといっても過言ではありません。

曲上の二人と同じように、M&AにおいてもPMIによって『企業がどこに進んでも大丈夫』『死ぬときは一緒です』という意識を組織全体に構築することが非常に重要です。

5.最後に

企業にとってM&Aは「部屋とYシャツと私」の登場人物のように、期待と不安が複雑に入り混じる大きな転換点です。不確実性を払拭しつつ、より効率的にM&Aの交渉を進めるためには、専門家の知識が不可欠です。当社が運営する「M&Aプラス」には、様々な面で企業のM&A戦略をサポートしてくれる専門家が1,200名以上集結しています。今後M&Aに関して何かお困りごとやご質問がございましたら、まずは当社ご相談いただけますと幸いです。

「部屋とYシャツと私」の終盤には、「毎日磨いていたいから人生の記念日には君は綺麗といって」という歌詞が登場します。M&Aにおいても、専門家のサポートにより、当事者の不安や不確実性を出来る限り払拭し、統合後もお互いがシナジーを実感できるような契約を実現することが可能です。

当事者が、毎年の契約記念日にお互いが感謝し合えるようなM&Aが実現することを願っております。

また、そのような取引に専門家が集うプラットフォームである「M&Aプラス」の運営者として、何かしらの形で関与することが叶いますと大変光栄に思います。

執筆者
デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
イノベーション FAプラットフォーム
シニアアナリスト 牟禮 貴史

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