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カーネル・サンダース像はなぜ不思議なポーズをしているのか

基礎知識・ノウハウ

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皆さんはカーネル・サンダース像がなぜ「小さく前ならえ」のようなポーズをしているかご存知ですか。

今回は、カーネル・サンダース像のポーズから、経営者の「思い」を読み解いていきたいと思います。

1.ケンタッキー・フライド・チキンとカーネル・サンダース

ケンタッキー・フライド・チキン(現KFCコーポレーション)の創業者である 「カーネル・サンダース」ことハーランド・デイヴィッド・サンダースは、1890 年アメリカに生まれ、1930年に自身が経営するガソリンスタンドに併設レストランをオープンします。

その後、店舗の焼失や店舗が面する国道の迂回路新設など経営危機を何度も迎え、ガソリンスタンドは閉店することとなりますが、併設レストランの看板商品であったフライドチキンへのサンダースの思い入れは強く、「11種類のハーブとスパイスを使用し最新式の圧力鍋で調理を行うオリジナルレシピ」を手に、私財を投じて米国中のレストランに直接売り込みを始めることになります。 (この時すでにサンダースは65歳!)

オリジナルレシピを伝授したレストランに対して、フライドチキン売上の一部(1羽につき5セント)をサンダースに戻すという世界初のフランチャイズモデルの確立し、加盟店は瞬く間に拡大します。その後わずか10年足らずで北米で600店舗超の展開に成功し、世界を代表するファストフードの道を進むこととなります。

2.カーネル・サンダース像

お馴染みのカーネル・サンダース像(正式にはカーネル立像といいます)は、元々カナダのFC店舗がイベント用に製作したもので、その後長年倉庫に眠っていたところを視察に訪れた日本法人幹部が持ち返ったことが始まりです。

日本法人が設立された1970年代は、まだまだファストフードという業態やフライドチキンという食品が浸透しておらず、経営陣はマーケティングに苦慮していました。

そこで、カーネル・サンダース像はその親しみやすい表情も相まって「創業者の顔がわかる良い広告塔」として、日本国内ほぼ全ての店舗で設置され、認知度向上に多大な貢献をすることになります。

このような経緯のため、カーネル・サンダース像は日本にしか存在せず、米国を始めとした諸外国の方が日本のケンタッキー・フライド・チキンを見ると驚くことも多いそうです。地元野球チーム優勝を祝って道頓堀川に落とされたことがあると知ったら更に驚くことでしょう。

では、カーネル・サンダース像はなぜあのポーズをしているのでしょうか。「いつ食べるか、今でしょ」と言っているのでしょうか。

実は、あの像が初めて登場したカナダでのイベントでは、カーネル・サンダース像は手にバーレル(チキンが入れられるバケツのような容器)を持っていたそうです。自身が開発したレシピで作られたフライドチキンを、足しげくPRして回っていたサンダースの姿をモニュメントとして再現したのかもしれません。カーネル・サンダース像には「私が一生懸命考えたフライドチキンです。とってもとっても美味しいので、是非ご賞味ください」という「思い」が込められているのです。

3.経営者の「思い」とは

サンダースは74歳になって、ケンタッキー・フライド・チキンを米国内企業へ譲渡することを決断します。その際サンダースが特にこだわった条件は、「自身の品質管理責任者就任」と「会社のトレードマークとして譲渡後もテレビコマーシャル等に出演すること」だったそうです。年齢的な事情もあり、以前ほどアグレッシブにPRが出来なくなったとはいえ、多くの苦悩や信念が詰まったオリジナルチキンへの「思い」は依然として強く、上記の条件がクリアできる譲渡先も慎重に選定したと言われています。

※ちなみに、サンダースの理念に強く共感した譲受企業のオーナーはケンタッキー・フライド・チキンの世界展開に成功し、その後ケンタッキー州知事にも就任しています。

私自身、M&Aプラットフォーム担当としてサンダースのような経営者の「思い」に触れる場面が多くあります。一方で、そのような「思い」が正確に伝わらないまま交渉が続いてしまう、もしくは破断となってしまうことがある、というお話をお伺いすることもあります。

私はM&Aとは「会社と会社」のやり取りではなく、「人と人」・「思いと思い」の引き合わせであると考えています。普段ご自身の業務に追われている経営者同士で直接お話を進めると、どうしてもミスコミュニケーションが起きがちで、もっとも重要な「思い」が正確に届かないことが多くあります。また、自身の会社に対する「思い」が強ければ強いほど、そういったミスコミュニケーションを防ぐために第三者である専門家を介して相手方に正確に情報を届けることが肝要となってきます。

デロイト トーマツ グループが運営する「M&Aプラス」には経営者同士の「思い」を的確に相手に届けることが出来る専門家が600社超集結しています。サンダースのように、自身の強い「思い」を承継することを検討する際は、是非選択肢の一つとして「M&Aプラス」を活用いただけると光栄です。そして、次にカーネル・サンダース像を見かけられた際には、そこに経営者の「思い」が込められていると感じていただけると嬉しく思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

執筆者
デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
イノベーション FAプラットフォーム
シニアアナリスト 牟禮 貴史

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