準備期間1年では時間が足りない!円満な事業継承のために必要な準備とは
事業継承
事業承継の大切さについては、最近耳にされる機会が増えたかと思います。経営者の方にとっては、社内外における課題も多く、なかなか事業承継について時間を割けないかもしれません。しかし、事業承継の準備を怠ると、親族をはじめ従業員・取引先などに対して、思わぬ負担をかけます。今回は事業承継における準備の大切さと取組について説明します。
1. スムーズな事業承継にはしっかりした準備が必要
小規模・中小企業の事業承継の代表的なパターンとして、自分の子どもなど身内に事業をつながせる親族内承継、社内の役員や従業員、あるいは外部の人材を後継に指名する親族外承継、そして他社に事業を売却するM&Aがありますが、これらのどれを選ぶ場合でも大切になるのが準備です。
事業承継に向けて考えるべきこと、するべきこととしては、後継者を探すことはもちろん、後継者の了承を得ること、引継ぎで必要となる資金の準備、金融機関との調整、取引先との関係の維持、さらには従業員の反発への対処などが挙げられます。これらを適切に行わず、準備不足の状態で事業承継を行えば社内に大きなハレーションが発生しても不思議ではありません。
それでは、事業承継のためにはどの程度の時間が必要になるのでしょうか。中小企業庁が公開している「2019年版 中小企業白書」によれば、経営者が引退を決断してから実際に引退するまでの期間について、事業承継した経営者、あるいは廃業した経営者とも準備期間が短いほど「時間が足りなかった」と回答する割合が高くなっています。
出所:中小企業庁「2019年版 中小企業白書(第4節 経営者引退の実態)」より
また、廃業した経営者よりも事業承継した経営者の方が「時間が足りなかった」と回答する割合が大きいことから、特に事業承継を考えるのであれば相応の時間を準備に充てるべきだと言えるでしょう。
2. 事業承継のために必要となる準備の内容
事業継承の準備として行うべきこととしては、経営状況および課題の把握、企業価値向上を目的とした経営改善、そして事業承継計画の策定などが挙げられます。それぞれ詳しく見ていきましょう。
当然ですが、将来にわたって事業を維持・継続していくためには、売上と利益の確保、そして事業の競争力向上に向けた施策が欠かせません。これらを検討する上で重要となるのが、現状の正確な把握です。税務および財務状況はもちろん、管理会計の視点で商品やサービスごとの損益や部門ごとの経費、負債や銀行借入の返済状況などを改めて明確化します。また株主名簿や株主総会議事録、決算書、あるいは取引先との契約書など、重要書類の保管場所や管理方法などについても改めて整理しておくべきでしょう。
一般に「磨き上げ」と言われる、経営改善にも取り組みたいところです。そのためには現状の経営状態を把握する必要があります。この際によく用いられるのがSWOT分析です。これはプラス要因とマイナス要因、そして内部要因と外部環境のマトリクスで自社の強みや弱み、機会および脅威を明確化するというものになります。
このSWOT分析で自社の強みと弱みを可視化し、プラス要因を伸ばすための施策、あるいはマイナス要因を排除するための取り組みを検討していきます。これによってビジネスを強化するための道筋を明確化しておくことができれば、後継者にとって大きな安心材料となるでしょう。
自社の現状を明確化し、将来に向けた経営改善の方針や目標を定めた後で作成するのが事業承継計画です。これは事業承継に向けた行動計画と言えるものであり、いつ/誰に/何を/どのように引き継ぐのかを明確化していきます。なお中小企業庁が公開している「経営者のための事業承継マニュアル」には、事業承継計画の様式が掲載されています。
出所:中小企業庁「経営者のための事業承継マニュアル(P.17)」より
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/2017/170410shoukei.pdfなお事業承継計画は、後継者と一緒になって考えることが重要であることから、計画の策定前に後継者を決めておく必要があります。そのため、基本的には事前に後継者を決められる、親族内承継や親族外承継で作成するものとなります。
親族内・親族外承継ではなく、M&Aで社外に事業を引き継ぐのであれば、事業を譲り渡す企業を選定することになります。その際にはまず仲介者やアドバイザーを選定し、企業価値の評価を経て譲渡価格を決定、そして譲り受け企業を選定するというのが一般的なプロセスです。
いずれにしても、事業承継の検討から完遂までにはかなりの時間が必要となります。まだ大丈夫だと思わず、スムーズに事業承継ができるように、5年先、10年先を見越して準備を進めましょう。
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