ガラパゴス諸島のイグアナで考えるM&A
基礎知識・ノウハウ
ガラパゴス諸島は、東太平洋上の赤道下にある100以上の小島からなる諸島です。
ガラパゴス諸島大陸と陸続きになった歴史を持たず、在来の生物は飛来したか海を渡って漂着したものの子孫に限られます。そのため生物の種類が限られており、また、多くの固有種が見られます。「ガラパゴス=ゾウガメたちの島々」という名前の由来からもわかるように、大型の爬虫類が多く生息しています。
スマートフォン以前に日本で普及したフィーチャーフォンである「ガラケー」は「ガラパゴスケータイ」の略で、日本の事業者専用仕様で設計されており、一部の例外を除いて、派生輸出モデルを持たない国内特定一事業者専用モデルであったため、ガラパゴス諸島の独特の生態系になぞらえてそう呼ばれました。
(出展)伊藤秀三『新版 ガラパゴス諸島』中央公論社
ガラパゴス諸島の固有種として「ウミイグアナ」と「ガラパゴスリクイグアナ」が存在します。
「ウミイグアナ」は岩礁海岸に住んでいます。トカゲ類の中で唯一海の中に潜ることができ、海草を食べて暮らしていますが、ガラパゴス諸島周辺の海域は寒流で海水温が低いため、海から上がると日光浴をして体温を上げたり、逆に体温が上がりすぎると岩影や木陰に避難したりして暮らしています。
「ガラパゴスリクイグアナ」は陸で暮らしていて、ウチワサボテンの花や果実を食べています。また、ウチワサボテンの茎には棘が生えていますが、棘ごとむしゃむしゃ食べることもできます。
長年「ウミイグアナ」と「ガラパゴスリクイグアナ」は住むところも食べるところも分けて共存していましたが、近年、地球温暖化によって海草が減り、食べるもののなくなったウミイグアナが、食べ物を探して陸に上がってきてしまいました。
陸に上がったウミイグアナは、ガラパゴスリクイグアナと出会い、肉食でもなく特に天敵もいなかった種族のため喧嘩にもならず、(なぜか)恋に落ちます。そこで生まれた子供が「ハイブリッドイグアナ」です。
ハイブリッドイグアナは名前の通り、ウミイグアナとガラパゴスリクイグアナの2種の性質を併せ持ちます。ガラパゴスリクイグアナのように陸で生活することができ、またウミイグアナのような鋭い爪でサボテンにも登って食べることができます。(ちなみに海草も食べることができるようです)
イグアナのいる島のサボテンはイグアナに食べられないように10mほどの高さがありますが、今までガラパゴスリクイグアナは、サボテンの花や果実が落ちてくるのをサボテンの足元でじっと待っていました。しかし、ハイブリッドイグアナは、サボテンの足元でじっと待っているリクイグアナを尻目に、サボテンに登って食べつくしてしまうのです。
企業の合併も、ガラパゴス諸島のこのような生態変化と似たところがあるように思います。例えば地球温暖化によって海草が減ってしまったように、急激な環境変化がおき、特定の業種に時に淘汰圧がかかってしまう。しかしそこで単に絶滅=廃業してしまうのではなく、例えば異業種と提携・合併しながらこれまで自身がやってきたことを活かしていく道があるのではないでしょうか。
ちなみに残念なことに、「ハイブリッドイグアナ」は雑種であるため繁殖能力が持たず、子孫を残すことはできません。
もしかしたら企業も、環境に合わせて短期的に見て過度な最適化した結果、長期での持続可能性が低くなることは多いかもしれません。
執筆者
デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
イノベーション事業部 FAプラットフォーム
シニアアナリスト 日野原 未葉
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