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ホテル・観光業界のいま ~増える倒産、廃業とM&A~(後編)

基礎知識・ノウハウ

M&A

前編では、ホテル・観光業界の定義や最近の動向についてと、私の個人的な出張におけるホテル選びの話をさせていただきました。後編ではホテル旅館業界で増加している倒産や廃業、M&Aについて話をしていきます。

1.後継者不在増加による2025年問題

昨今よく耳にするキーワードとして「事業承継」「廃業」「後継者不在」などがありますが、実際にそれらは国の将来にも影響を及ぼすほどの深刻な問題となっています。

2017年秋に経済産業省と中小企業庁が出した試算によれば、「現状を放置すると、中小企業廃業の急増により、2025年頃までの10年間累計で約650万人の雇用、約22兆円のGDPが失われる」可能性があり、「大廃業時代」の到来ともいわれています。あわせて、休廃業・解散企業の約5割近くが黒字であることにも触れ、地方経済の再生・持続的発展には事業承継問題の解消が必要であると明言しています。

図表1

問題の原因としては全国的に「後継者不在」の影響が多くなっており、廃業予定企業のうち約30%が後継者難を理由としています。こういった状況はホテル・旅館業界においてももちろん同じで、事業承継問題に頭を悩ませる企業がここ数年増加してきています。

図表2

2.ホテル・旅館業界の事業承継事情

日本政策金融公庫「生活衛生営業の景気動向等調査」(2018年7~9月期)の特別調査として行われた事業承継に関するアンケート調査によると、ホテル・旅館で「事業を承継させたい」とする企業は54.9%と半数超で、「承継させるつもりはない」は12.6%と約1割でした。承継の意思がある企業のうち、約半数は後継者が決まっており、そのほとんどが「子ども」です。事業承継をしない理由は「後継者またはその候補がいない」が約半数でした。

ホテル・旅館はこのほか「現時点では考えていない」が32.6%でした。「承継させるつもりはない」と答えた約1割とあわせて、およそ40%以上の企業が廃業予定か未定という状況になります。

承継の意思があるホテル・旅館のうち、後継者が決まっている企業は51.0%と約半数で、このほか「後継者は未定だが、候補者はいる」が32.3%。「後継者は未定で、候補者もいない」が16.7%となっています。

現在の経営者と後継者または後継候補者との関係は、ホテル・旅館で「子ども」が90.0%を占めており、このほか「子ども以外の親族」が3.8%、「親族以外の役員・従業員」が6.3%で、「社外の第三者」はありませんでした。

事業承継の意思がないホテル・旅館に、その理由を聞くと(複数回答)、「後継者または後継候補者がいない」が55.0%と最も多く、次いで「事業の先行きに不安がある」40.0%、「現在の業績が悪い」25.0%、「承継をするほどの価値を感じない」20.0%、「当初から自分の代でやめようと考えていた」15.0%、「後継候補者の心当たりはあるが、能力の面で不安がある」10.0%―などとなっています。

「第三者から事業の承継をしたいと打診があった場合の意向」は、ホテル・旅館は「現時点では分からない」が59.1%と最も多く、「事業の承継はしたくない」が22.7%、「前向きに事業の承継を検討する」が13.6%、「事業の承継を検討してもよい」が4.5%と続いています。ただ、同設問の回答はサンプル数が少ない参考値とされています。

3.新型コロナウイルスの影響とM&A

前編でお話ししたように、ここ数年インバウンドや東京オリンピックの影響で右肩上がりだったホテル・観光業界も、コロナウイルスの影響をもろに受けて前年対比での訪日外客数は多い月ではマイナス99%近くにもなってしまいました。

当然のように倒産件数も急増していて、東京商工リサーチによると、2020年上半期(2020年1月~6月)の宿泊業の倒産件数は、前年比140%増の72件で、2.4倍増となりました。過去20年間を見ても、2011年(87件)に次いで2番目に高い水準でした。

このうち、新型コロナウイルス関連の倒産は32件で、全体の44.4%を占めており、宿泊業のコロナ関連の倒産は、飲食業(36件)に次いで2番目の多さでした。

主な倒産は滋賀県のロイヤルオークリゾート(負債額50億円)、三重県の北海観光(同47億円)などで、負債額別では10億円以上の大型倒産が12件で、前年比2.4倍増と大幅に増加した。地域別では、9地域全てで発生しましたが、中でも長野県(8件)と静岡県(7件)を含む中部(21件)が最多という状況になっています。

最近では、当社の運営するM&A・事業承継プラットフォーム「M&Aプラス」にもホテル、旅館の売却相談が多く寄せられており、2021年以降はさらに増加すると予測しております。

特徴として以前はあまり相談がなかったリゾートホテルや地域では名前が知れた旅館などの売却希望も増えてきています。

私が先日訪れた地域でお聞きした話では、数か月前に完成したばかりの外国資本の大型観光ホテルが、さっそく売りに出されているとのことでした。元々は完全にインバウンド狙いだったそうですが、コロナの影響で当てが外れてしまい、いまはホテルの見せ方も国内の旅行者向けに方針を変更して運営されているそうです。

知り合いの地元の方が、「開業当初はホテルの外壁には外国人向けの案内をたくさん貼っていたのに、最近急に地元の方言を織り交ぜた日本語の案内ばかりになったね」、と仰っていたのが印象的でした。ホテルの方も必死に生き残る術を考えているのでしょう。

実際に2020年以前もホテル・旅館業界では、インバウンドの増加や東京オリンピックの開催に向けて、2018年6月に施行された住宅宿泊事業法により、M&Aが盛んに行われてきました。2021年以降は生き残るための一つの選択肢として、M&Aがさらに活発になっていくことが予想されます。

今後はコロナウイルスの影響に後継者不在の問題もあいまってさらにホテル・旅館のM&Aが加速していくなかで、「M&Aプラス」としても、地元や観光客に愛されるホテル・旅館を1軒でも多く継続させるお手伝いができるように努めてまいります。

執筆者
デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
イノベーション事業部 FAプラットフォーム
シニアヴァイスプレジデント 宮川 文彦

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