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事務局の公募要領から紐解く「経営資源引継ぎ補助金」

基礎知識・ノウハウ

M&A

2020年4月30日、令和2年度補正予算が成立しています。その中には「経営資源引継ぎ・事業再編支援事業」の内容も含まれています。
経営資源引継ぎ補助金の事務局の募集は、2020年4月17日から5月8日までの期間で行われ、現在選定中です。その公募要領には、経営資源引継ぎ補助金について少し詳しく記載されていたので、その情報をもとに内容を整理します。

1. 経営資源引継ぎ補助金の予算額と補助予定件数

令和2年度補正予算案額は36億円であり、以下の費用項目に区分されています。

図表1 事務局運営業務に係る経営資源引継ぎ補助金の費用区分

事務費は事務局の費用なので、「可能な限り合理化することに努めるもの」とされています。また、最終的な実施内容、交付決定額については、中小企業庁との調整によって決定されるとのことです。

補助予定件数は900件とされています。M&Aの当事者は売手と買手になりますので、仮に両名が補助金を申請した場合、M&A件数として考えると450件相当になります。レコフM&Aデータベース調べでは、2019年のM&A件数は4,088件でしたので、約1割強に相当する件数と見込んでいると言えます。

2. 経営資源引継ぎ補助金のスケジュール

選定基準のひとつに「事業実施計画(スケジュール)の妥当性、効率性」が記されており、スケジュールにおいては現段階では確定していません。ただし、事業の実施期限は「原則、令和3年3月末まで」とされています。また、状況に応じて中小企業庁長官へ指示を仰ぐことになっています。開始時期においては、今後注視しなければなりません。

3. 経営資源引継ぎ補助金の補助要件

現時点では、経営資源引継ぎ補助金の事務局の募集段階であり、情報は限られています。

図表2 経営資源引継ぎ補助金の補助要件

採択基準では「地域の需要及び雇用の維持や、地域の新たな需要の創造及び雇用の創出を図り、我が国経済を活性化させる事業再編・事業統合を促進するという観点から支援対象事業について上記1(ここでは、図表2のこと)補助対象事業を踏まえるものとする。」と記されており、地域経済への貢献から、延いては日本経済を支える中小企業のためのM&Aをサポートする意図が感じられます。

また、「事業の独創性、収益性、継続性等及び当該事業者の状況を勘案し、政策的に支援する必要が認められるものに限るものとする。」とあります。M&A実行後におけるシナジーの実現についても相応に求められており、PMIの重要性を感じます。

PMIとはPost Merger Integrationの略であり、M&A実行後における統合プロセスを意味し、M&Aの成功を左右する取り組みです。現時点では、今後の検討状況によって変更される可能性もありますが、求められている採択基準はM&Aの本質とも言える内容になっています。

図表3 経営資源引継ぎ補助金の補助対象、補助率、補助上限額

補助上限については、注意が必要です。M&Aを行う場合は買手・売手ともに上限は200万円と定められていますが、廃業費用を活用する場合においての売手の上限は650万円です。前回でも述べたように、M&Aにおける最低手数料が300万円だった場合、経営資源引継ぎ補助金はもっとも有効に使える内容になっています。つまり、これは小規模なM&Aに最適な補助金であるとも言えます。

現在は事務局公募の段階であり、候補者の提案次第でも内容が変わることが考えられます。今後も詳細が分かり次第、コラムで取り上げます。

執筆者
デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
イノベーション FAプラットフォーム
シニアアナリスト 三枝 真也

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