介護業の事業売却を検討している方向け 売却検討時に整理しておくべきポイント
基礎知識・ノウハウ
M&A業界で人気業種の1つである介護業。今回は介護業界におけるM&Aの現状と売却検討時に整理しておくべきポイントについて解説していきます。
1.介護業とは
高齢者や障がい者など日常生活を送るにあたって何かしらの支援を必要としている人に対して様々なサービスを提供する事業のことを「介護業」と言います。ただ、一言で介護業と言っても様々な形態が存在し、介護対象が「高齢者」なのか「障がい者」なのか、そしてサービスの提供場所が介護施設である「施設サービス」なのか介護対象者の自宅である「居宅サービス」なのかにより、大きくは4つのパターンに分類することができます。
2.介護業界におけるM&Aの現状
様々な形態がある介護業ですが、共通の特徴として、新規参入や事業継続のために許認可の取得や規制の順守が必要であることがあげられます。提供サービスの内容によって異なりますが、介護業に取り組む法人を設立し事業を開始するためには人員基準や施設設備の基準を満たす必要があり、また都道府県や市区町村の状況によっては新規参入の許可を取るまでに時間がかかるケースも存在します。
そんな参入障壁が高い業界である介護業界において、すでに事業を営んでいる法人をM&Aにより買収することで介護業界に参入するという手法が一般的になりつつあります。
介護事業を始めるにあたって必要な基準をすでに満たしている会社をM&Aにより買収することができればスムーズに介護事業を始めることができるため、介護業界への参入や新たな拠点展開を検討している事業者が買収対象となる介護事業者を探しているのです。
3.介護業をM&Aによって売却するために事前に整理しておくべきポイント
ここからは、売却側の目線に立って、スムーズにM&Aを成功させるために事前に整理すべきポイントについて解説していきます。
※売上状況・株主状況など業種に限らず整理すべき項目については割愛いたします
サービス種別
前述の通り、介護業と言ってもサービス内容は様々ですので、当然ながらどういったサービスを提供しているのかを明確にする必要があります。主な種別は以下の通りです。
・ 高齢者向けサービス
介護付き有料老人ホーム/住宅型有料老人ホーム/サービス付き高齢者向け住宅/グループホーム/特別養護老人ホーム/介護老人保健施設(老健)/ショートステイ/通所介護/訪問介護
・ 障がい者向けサービス
放課後等デイサービス/障がいグループホーム/就労移行支援/就労継続支援A型/就労継続支援B型
・ その他介護関連サービス
介護福祉用具レンタル・販売
運営形態
選択すべきスキームが異なるため、買手にとっては運営形態も気になるポイントです。以下いずれかの運営形態であることが一般的です。
株式会社/個人事業主/社会福祉法人/医療法人/NPO法人
従業員に関する情報
人手不足の介護業界においては、人材確保の手段としてM&Aを検討する企業も増えています。そのため、従業員に関する以下の情報についても整理しておきましょう。
関連資格保有者数(看護師、介護福祉士など)/継続雇用が可能な従業員数(見込み)/従業員の経験年数・年齢層
不動産状況
施設のあるサービスの場合、不動産の状況について整理しておきましょう。
所有形態(自己所有or賃貸)/賃料(賃貸の場合)/築年数/建物・土地面積/部屋数/定員/現在の稼働率・入居者数/近隣環境/駐車場有無/周辺の競合状況
また、自己所有の不動産がある場合、不動産ごと売却するのか、不動産は切り離して事業のみを譲渡するのかも事前に整理しておく必要があります。不動産ごと売却する場合、今後の不動産管理の必要がなくなるというメリットがありますが、不動産評価が含まれるため譲渡対価が大きくなり、資金力のある買手でないと買収を検討することができなくなるというデメリットがあります。不動産を切り離して譲渡する場合、賃料収入として継続収入を得られる、初期的な買収資金を抑えられるため買手候補の選択肢が広がるというメリットがありますが、不動産の管理・修繕等が必要になるというデメリットがあります。
その他
自らが人生をかけて取り組んできた会社を手放すにあたり、譲渡金額の大小ももちろん大切ですが、それ以上に大切なのは自らの「想い」をきちんと引き継いでくれる買手先を見つけることではないでしょうか。社会貢献のために強い想いをもって事業に取り組まれている経営者や従業員が納得できる引き継ぎ先を探すために、以下のような内容も整理しておくといいでしょう。
事業に対する想い/企業理念/顧客やその家族からの評価/他社にはない独自のサービス・強み
4.おわりに
ここまで、介護業におけるM&A業界の状況と売却検討時に整理しておくべきポイントについて解説いたしました。本コラムが少しでもお役に立てば幸いです。
自らの想いを継いでくれる引き継ぎ先を見つけるためのアドバイザーとして、もし介護業の売却を専門家に相談されたいということであれば、全国のM&A支援専門家が集うプラットフォームである「M&Aプラス」までぜひご連絡ください。介護業に詳しい専門家をご紹介いたします。
お読みいただきありがとうございました。
執筆者
デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
イノベーション事業部 FAプラットフォーム
シニアヴァイスプレジデント 宮川 文彦
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