M&Aにおける企業概要書の重要性
基礎知識・ノウハウ
M&Aにおいて、買手が対象企業を買収するかの検討の初期段階に使われるものに、対象会社の「企業概要書」というものがあります。英語でInformation Memorandumということから「IM」と呼ばれることもあります。ティザーやノンネームシートといわれるごく限られた情報で買手に買収意欲を確認したのち、買収の検討を進める場合はセルサイドからバイサイドに対して企業概要書が提供されます。
中小企業M&Aの場合、企業概要書を作らずに、既にある資料をもとに対象会社について説明することもありますが、多くの場合企業概要書は必要とされ、その内容は重要視されます。ではなぜ重要なのでしょうか。そもそも企業概要書にはどんなことが書いてあるのかを見ていきましょう。
1. 企業概要書とはどんなものか
企業概要書は、社名や所在地などの基本情報から始まり、役員構成、沿革や組織図などの会社概要に当たるもの。財務状況、取引先の一覧や市場シェア、製造業であれば設備などが書かれることが多いです。
買手は対象会社について、公表されている情報以外は企業概要書から得ることになるので、対象会社の財務・事業に関する全体像が分かりやすいように作成すること、買収の検討に必要な情報が不足なく盛り込まれることのほか、買手にとって対象企業が魅力的に見えるように作らなければなりません。なので、対象会社の魅力を売手FAがよく理解したうえで、手をかけて構成から考えます。他業種の買手候補に見せる場合は、対象会社の属する業種への理解を深めるため、市場環境分析を載せることもあります。
2. なぜ企業概要書が重要か
企業概要書を作らずに、決算書や会社概要など既に用意されている資料で買手に検討を求める場合、必要な情報が不足しており、質問のやりとりが長引いてしまうことがあります。検討期間が長引くことは売手・買手の双方にとって負担が大きくなりますし、その間に買手の買収意欲が低下してしまう可能性や売手の売却の決意が揺らいでしまう可能性もあります。
企業概要書が作られている場合、質問のやりとりを最小限に抑えることが可能です。買手候補の興味を引けなかった場合も、検討期間を短くすればその分早く次の買手候補探しに着手することができます。
中小企業のM&Aでは必ずしもM&Aを専門の仕事としているFAがつくわけではなく、企業概要書の作成に十分な時間が取れるとは限りませんし、慣れているとも限りません。また、時間が取れたとしても、企業概要書作成に必要な情報がすぐに対象会社から取得できず、まずは手元にある情報で検討を進めてもらうというパターンもあるでしょう。しかし、その後の買手探しや交渉がぐっと楽になることも期待できるツール のひとつですのでので、可能な場合は企業概要書を準備することをおすすめします。
執筆者
デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
イノベーション FAプラットフォーム
アナリスト 日野原 未葉
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