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薬局M&Aに必要な基本知識(前編)

基礎知識・ノウハウ

M&A

身近な存在である「薬局」ですが、皆さんは「薬局」の定義をご存じでしょうか。もしかすると皆さんが「薬局」だと思っていた店舗は、「薬局」ではないかもしれません。M&Aを検討するうえで、重要なことのひとつは業界特有のルールを理解することです。今回は薬局における基本的な知識について説明します。

1. 薬局の定義とその他の業態

薬局の定義は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下、「薬機法」)」第2条第12項に定められています。

その内容は「この法律で「薬局」とは、薬剤師が販売又は授与の目的で調剤の業務を行う場所(その開設者が医薬品の販売業を併せ行う場合には、その販売業に必要な場所を含む。)をいう。ただし、病院若しくは診療所又は飼育動物診療施設の調剤所を除く。」とされています。

「薬局」は「薬剤師が調剤を行い、医薬品を販売又は授与する場所」というわけです。また、調剤を行わず医療品販売を行う「店舗販売業」と「配置販売業」も存在します。つまり、調剤業務の有無が、「薬局」を定義している大きなポイントと言えます。その他に業態や資格の違いにより、取り扱える医薬品の範囲が異なります。図表1で、それらの違いを確認しましょう。

図表1 業態別にみる管理者と取扱可能な医薬品

「調剤」とは医師・歯科医師・獣医師による処方箋に基づき、患者へ医薬品を交付することであり、上記の業態の中では「薬局」のみができる業務です。

「要指導医薬品」と「一般用医薬品」は、処方箋を必要とせずに購入できる医薬品で、OTC医薬品(市販薬、Over The Counterの略称です。)とも呼ばれています。

「要指導医薬品」は医療用医薬品からOTC医薬品に転用されたばかりの医薬品を指し、薬剤師との対面による書面を用いた情報提供が義務付けられています。上記の業態の中でこれらを扱えるのは「薬局」と「店舗販売業(薬剤師)」のみであり、インターネットでの販売もできません。なお、「要指導医薬品」は、原則3年間OTC医薬品として販売された後、安全性に問題がなければ「一般用医薬品」へ移行されます。

「一般用医薬品」は上記の業態の全てにおいて販売できますが、薬剤師か登録販売者かによって、取り扱える範囲は異なります。また、適切なルールの下であれば、インターネットでの販売もできます。

2. 薬局とドラッグストアの違いとは

今までの説明のなかで、「何故ドラッグストアが業態に入っていないのか」と疑問を持たれた方もいらっしゃるかと思います。

実は薬機法ではドラッグストアについては定義されておらず、「薬局」または「店舗販売業」のいずれかで申請をする必要があります。調剤を併設させる場合は「薬局」での申請となり、そうでない場合は「店舗販売業」となります。つまり、ドラッグストアといっても、「薬局」であるドラッグストアと「薬局」ではないドラッグストアが存在するわけです。

3. 薬局M&Aのポイント その1「業態の違いを理解すること」

薬局のM&Aにおいては、当事者とボタンの掛け違いにならないように、業態による違いに注意しなければなりません。例えば、ドラッグストアの案件を検討する際に、「薬局」か「店舗販売業」かで、投資判断が異なる可能性も出てきます。

「店舗販売業」と「配置販売業」においては、薬剤師か登録販売者かによって、扱える医薬品が異なります。また、M&Aの対象となる店舗において、薬剤師、登録販売者の雇用引継ぎの有無も重要な判断基準になります。この点については、後編で詳しく説明します。

実際に薬局のM&Aを検討する際には、薬局の立地や処方箋の集中率等さまざまなポイントがありますが、今回は薬局M&Aの導入として「薬局」の定義とその他の業態について説明しました。

薬局業界に限った話ではありませんが、特に異業種からの参入の場合は、対象となる業界特有のルールを理解することがM&Aを成功させるひとつの前提条件になります。後編では薬機法の観点から、薬局についての理解を深めたいと思います。

執筆者
デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
イノベーション FAプラットフォーム
シニアアナリスト 三枝 真也

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