コラム記事
column

なぜ減価償却をする必要があるのか

基礎知識・ノウハウ

M&A

経理や財務に携わると、「減価償却費」という言葉は初期の段階で耳に入ってくることになります。では「減価償却」には本来どのような目的があるのでしょうか。

今回は「減価償却」について、解説いたします。

減価償却とは

皆さんは減価償却について、どのような認識をお持ちでしょうか。「建物のように、時の経過とともに価値が減少する固定資産について、減少分の価値を定量的に示すもの」という捉え方をされている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

確かに、取得した償却対象資産は一定の基準で減価償却が実施され、会計年度ごとに貸借対照表上の帳簿価額が減少(減価償却累計額の増加)していきますので、「減価償却=償却対象資産の価値減少手続き」と考えることもできるかもしれません。

では、実際の会計上ではどのように位置付けられているのでしょうか。企業会計における普遍的なルールとして位置づけられている「企業会計原則」には減価償却について以下のように記載されています。

【以下「企業会計原則」より抜粋】
「有形固定資産は、当該資産の耐用期間にわたり、定額法、定率法等の一定の減価償却の方法によって、その取得原価を各事業年度に配分し、無形固定資産は、当該資産の有効期間にわたり、一定の減価償却の方法によって、その取得原価を各事業年度に配分しなければならない。」

やや難しい表現ですが、文中には「資産価値の減少」といった言葉は登場せず、「取得原価を配分する」という表現が用いられています。では、「取得原価の配分」とはどのような意味合いを持つのでしょうか。

費用収益対応の原則

同じ「企業会計原則」の中には「費用収益対応の原則」という原則が明記されています。

「費用収益対応の原則」とは、当期の利益を算出する際に、当期の発生費用額を当期の収益額に対応する部分と、次期以降の収益額に対応する部分とに区分することを要請する原則です。つまり、「費用収益対応の原則」に基づくと、当期に発生した費用のうち、当期の期間利益に見合う分は当期費用(売上原価など)として計上し、それ以外の費用は資産(棚卸資産など)として計上されることになります。

減価償却についても、この原則に基づいた処理が行われています。

例えば、製造用機械を購入した場合、取得対価は当期に全額費用計上されることはありません。その代わり、その機械が収益を生むと見込まれる期間(耐用年数といいます)を定め、計画的・規則的に取得対価を費用として按分することで、実現する収益と機械取得による費用を適切に対応させています。その際、費用として計上されなかった取得対価は、そのまま固定資産として貸借対照表に計上されることになります。

減価償却の目的とは

このように、減価償却の最も重要な目的は、適正な費用配分を行うことで期間損益を適正に算定することにあります。特に機械や建物のような有形固定資産は、一定期間にわたり使用することで将来の収益獲得に貢献するため、資産取得に要した対価は当期のみならず将来収益にも対応させるべきなのです。

減価償却によって各期に費用を配分することで、収益に対応する費用を適切に算定することができます。

減価償却は、損益算定に直結する重要な要素であり、企業の収益力・キャッシュフロー分析、事業承継やM&Aを検討する際の企業価値評価にも大きく影響します。また、一定額までは損金算入も可能なため法人税等の負担を抑える効果も期待できます。

デロイト トーマツ グループが運営する「M&Aプラス」には減価償却処理を含む様々な財務面サポートが可能な専門家が600社超集結しています。減価償却について改めて理解を深めていただいたうえで、主に事業承継に関してより専門的な相談をご希望される際はぜひ一度「M&Aプラス」の活用をご検討ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

執筆者
デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
イノベーション FAプラットフォーム
シニアアナリスト 牟禮 貴史

関連記事
ご案内

会社・事業の譲渡・譲受に係るご相談はこちら(無料)

M&Aプラス ライト会員のご入会はこちら(無料)

M&Aプラス スタンダード会員・プロフェッショナル会員のご入会はこちら(有料)

アカデミー

案件組成からM&A取引実行までのFA業務を学びたい方はこちら(有料)

M&A戦略立案から実行まで、企業内で活きる実務スキルを獲得したい方はこちら(有料)

まずは、
お気軽にお問い合わせください。

お気軽にお問い合わせください。

WEBから
会員登録