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運送業の事業売却を検討している方向け 売却検討時に整理しておくべきポイント

基礎知識・ノウハウ

M&A

M&A業界で人気業種の1つである運送業。今回は運送業のM&Aについて状況と売却検討時に整理しておくべきポイントについて解説していきます。

1.運送業とは

運送業と一言で言っても、運送対象としては物品(貨物運送)や人(旅客運送)があり、また運送手段としても車(陸上運送)、船(海上運送)、飛行機(航空運送)など様々存在します。今回は、貨物自動車運送事業法という法律で下記のように定義された、他人から依頼を受けて料金を受け取り、自動車(トラック)で貨物を運送する貨物自動車運送事業について解説いたします。

「貨物自動車運送事業とは、一般貨物自動車運送事業、特定貨物自動車運送事業、貨物軽自動車運送事業をいう。

一般貨物自動車運送事業とは、他人の需要に応じて、有償で、自動車(軽自動車および2輪自動車を除く)を使用して貨物を運送する事業であって、特定貨物自動車運送事業以外のものをいう。

特定貨物自動車運送事業とは、特定の者の需要に応じ、有償で、自動車を使用して貨物を運送する事業をいう。

貨物軽自動車運送事業とは、他人の需要に応じ、有償で、自動車(三輪以上の軽自動車及び二輪の自動車に限る。)を使用して貨物を運送する事業をいう。」

出所:貨物自動車運送事業法 第一章 第二条を参考

2.運送業界におけるM&Aの現状

結論として、運送業界においてM&Aによる事業の売却・買収のニーズは高まっています。当社では様々な業種のM&A案件を扱っておりますが、運送業に関するご相談をいただく機会は年々増えています。その理由は売却側・買収側のそれぞれからみると以下の通りです。

売却側からみたM&Aの検討理由

売却側からすると、経営者の高齢化による後継者不在や経営状況の悪化がM&Aの主な検討理由となっています。中小企業における経営者の高齢化と後継者の不在は運送業に限らず日本の大きな課題となっており、99%以上の事業者が中小企業基本法で規定する中小企業(資本金3億円以下又は従業員300人以下)である運送業界においても例外ではありません。また、インターネット通販の普及により個人向けの物品運送需要は伸びているものの、コロナの影響で工場や建設現場など事業者向けの運送需要が縮小しており、その結果、小口の運送物が増えて収益性が低下しています。さらに、燃料費が高騰していることもあって、事業を継続させていくことに対する不安からM&Aによる売却を検討される方が増えています。

買収側からみたM&Aの検討理由

買収側からすると、人材(ドライバー)不足を解決するためにM&Aを検討される方が増えています。労働集約型のビジネスである運送業において売上を増やすためにはドライバーの確保が必要不可欠ですが、運送業界では人材不足が大きな課題となっており、特に若手の働き手を確保することが非常に難しい状況です。公益社団法人全日本トラック協会が作成している「日本のトラック輸送産業-現状と課題-2021」によると、自動車運送事業に従事している就業者のうち50歳以上の就業者が占める割合は43%となっています。そこで、運送事業者を会社ごと買収することで事業を拡大しようという戦略の企業が増えています。特に、若いドライバーを雇用している運送事業者を買収したいというご相談は非常に多いです。

3.運送業のM&Aを成功させるためのポイント

ここからは、売却側の目線に立って、自社の企業価値を高めてスムーズにM&Aを成功させるために事前に整理すべきポイントについて解説していきます。

ドライバーの状況

前述の通り、ドライバーを確保するために運送業のM&Aを検討するという企業が増えています。そのため、在籍しているドライバーの人数・性別・年齢構成・給与体系・M&A後の継続雇用の可能性について整理する必要があります。

事業の内容

運送業といっても事業内容は様々なので、事業の内容についても整理する必要があります。具体的には、運搬貨物の内容・運送エリア・主要取引先についての情報が必要です。

保有車両の状況

M&Aにおける評価金額を算定するためには、保有車両の状況を整理することも大切です。保有しているトラックの台数・種類・サイズ・使用年数・走行距離について整理しましょう。

コンプライアンス・労働環境の整備に対する取り組み状況

飲酒運転撲滅や交通事故を減らすための施策、労働環境の整備や働き方改革への取り組みなど法令順守はもちろんのこと、独自の取り組みとして実施していることがあればアピールポイントとしてまとめておきましょう。また、未払い残業代の有無についても買収側にとって重要な情報となるため、従業員の残業時間や残業代の支払い状況についても整理しておきましょう。

図表1

4.おわりに

ここまで、運送業におけるM&A業界の状況と売却検討時に整理しておくべきポイントについて解説いたしました。本コラムが少しでもお役に立てば幸いです。

もし運送業の売却について専門家に相談されたいということであれば、全国のM&A支援専門家が集うプラットフォームである「M&Aプラス」までぜひご連絡ください。運送業に詳しい専門家をご紹介いたします。

お読みいただきありがとうございました。

執筆者
デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
イノベーション事業部 FAプラットフォーム
シニアヴァイスプレジデント 宮川 文彦

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