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会計事務所向け 職員様にM&A支援業務に取り組んでもらうために重要なこと

基礎知識・ノウハウ

M&A

経営者の高齢化が進み、事業承継問題が深刻化しているなかで、親族内や社内に後継者が見つからない顧問先が増えている会計事務所も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、10名以上の会計事務所に参考にしていただきたい、顧問先のM&Aを支援するために職員様をうまく巻き込む4つのポイントを解説いたします。

図表 職員様をうまく巻き込むためのポイント

1.使命・やりがいを伝える

まずは、2025年までに70歳(平均引退年齢)を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となり、うち約半数の127万(日本企業全体の1/3)が後継者未定であるという現状や、経営者が70歳を越える法人の31%、個人事業者の65%が廃業すると650万人の雇用と22兆円のGDPが失われる(注)可能性があるという現状を伝えましょう。そのうえで、後継者問題に悩む中小企業を1社でも多く救うことで日本の重要課題を解決することにもつながることも伝えます。また、過去に事務所で事業承継の支援実績がある場合、顧客からの感謝の言葉や事業・雇用を継続することができたという事例も紹介することができればより良いでしょう。

(注)雇用者数は2009年から2014年までの間に廃業した中小企業で雇用されていた従業員数の平均値(5.13人)、GDPは2011年度における法人・個人事業主の平均付加価値をそれぞれ使用(法人:6,065万円、個人:526万円)

2.会計事務所がM&A支援に取り組まない場合顧問先がどうなってしまうのかを伝える

前述の通り親族内や社内に後継者が見つからない中小企業が増えているなかで、会計事務所がM&A支援業務に取り組まない場合下記2点の結末に至る可能性があります。

(1) M&Aによる事業売却の可能性があった顧問先が廃業してしまう

M&Aによる事業売却は早めの準備が重要です。適切な準備をしていればM&Aによって事業の継続や従業員の雇用維持、また売却代金を手に入れることが可能であったはずの顧問先に対して、経営者の一番の相談相手である顧問会計事務所が情報提供や提案をできなかったために対応が遅れ、廃業せざるを得ないというケースも多いです。そうなった場合は事業や雇用を継続できないことはもちろん、本来退職金代わりの売却代金を手にすることができたはずが反対に廃業に係る費用を支払うことになってしまいます。

(2) 他社(金融機関・仲介会社など)によってM&Aが成立してしまう

ニーズが高まるにつれて、M&A支援業務に取り組む専門家が増えています。特に金融機関や仲介会社は積極的に取り組んでおり、顧問先の財務状況を把握している金融機関の担当者が優良顧問先に対してM&Aによる売却を提案したり、仲介会社が登記情報を取得し社長の自宅にM&AのDMを送ったりする事例が増えています。その結果、会社設立当初からの長い付き合いであったり、顧問料が高額であったりという顧問先が知らない間に他社に買収されてしまうことがあります。

3.M&Aに関する知識を学ぶ機会を設ける

会計事務所が顧問先のM&A支援業務に取り組むためには、上記金融機関や仲介会社ではなく監査担当として顧問先を訪問している職員様に相談をしてもらう必要があります。そこで、定期訪問の際にM&Aに関する情報を提供できるように最低限の知識をつけるための研修を実施することをおすすめします。

4.インセンティブ(報酬)を設ける

M&A支援業務の獲得に対して担当者に報酬を与えることも当然重要です。その場合は、下記の点に注意する必要があります。

・ M&A支援業務は案件化~成約までの期間が長いため、成約時だけでなくM&Aアドバイザリー契約締結時(相談獲得時)にも報酬を与えましょう

・ 成約時のインセンティブは金額が大きく、一度に支給すると翌年以降の年収が下がってしまうので、複数回に分けて支給することで翌年以降のモチベーション維持と離職防止を図りましょう

・ 案件を獲得した個人だけでなく部門賞与への配分があるとチーム意識が高まります

いかがでしたでしょうか。以上4点を参考にしていただき、後継者問題に悩む中小企業の支援にぜひ取り組んでいただければと思います。

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執筆者
デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
イノベーション事業部 FAプラットフォーム
シニアヴァイスプレジデント 宮川 文彦

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