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M&Aアドバイザーの選び方~仲介方式とFA方式の違い~

基礎知識・ノウハウ

M&A

日本国内におけるM&Aの成立件数は増加傾向にあり、会社や事業の買収または売却を検討している経営者が増えています。とはいえ、経営者自身がM&Aに関する専門知識を持っているケースは少ないため、M&Aのアドバイザーに相談する方がほとんどでしょう。

そこで今回は、M&Aアドバイザーを選ぶ前に知っておきたい、M&Aにおける仲介方式とファイナンシャルアドバイザー(以下FA)方式の違いについて解説していきます。

1.仲介方式とFA方式の違い

仲介方式とFA方式には、大きく3つの違いがあります。

(1) 立ち位置の違い
(2) 報酬のもらい方の違い
(3) 案件の進め方の違い

(1) 立ち位置の違い

仲介方式とFA方式の最も大きな違いは、アドバイザーの「立ち位置」です。仲介方式では、売手企業と買手企業の間に1人のアドバイザーが入り、売手企業・買手企業の双方にM&Aの支援業務を提供します。それに対してFA方式では、売手企業、買手企業にそれぞれ別のアドバイザーがつき、売手側のアドバイザーは売手企業にのみ、買手側のアドバイザーは買手企業にのみM&Aの支援業務を提供します。

図表1

(2) 報酬のもらい方の違い

M&Aの支援業務を売手企業・買手企業の双方に提供するため、その対価となる報酬も双方から受け取ります。一方でFA方式の場合は売手企業・買手企業のどちらかにのみ業務を提供するため、報酬も片方からのみ受け取ることになります。

図表2

(3) 案件の進め方の違い

M&Aを成立させるまでの案件の進め方についても仲介方式とFA方式では違いがみられます。一般的に仲介方式では1社の売手企業に対して自社のネットワークの中から最適な買手企業を1社選定して条件交渉を行います。そこでM&Aが成立しなければまた別の買手企業を1社選定し、再度交渉という形で案件成立まで常に売手1社対買手1社での条件交渉が続けられます。それに対してFA方式では、1社の売手企業に対して複数社の買手企業を募り、売手1社対買手複数社での条件交渉が行われます。

図表3

2.仲介方式とFA方式のメリット・デメリット

これまで仲介方式とFA方式の違いについて解説してきました。ここで前述の特徴をふまえてそれぞれのメリット・デメリットについて解説いたします。

(1) 仲介方式の特徴

・ 売手企業・買手企業の双方に対してM&A支援業務を提供

・ 売手企業・買手企業の双方から報酬を受け取る

・ 1社対1社で条件交渉が行われる

メリット

・ 短い期間でM&Aを成立させることができる

アドバイザーが売手・買手企業双方の事業内容や経営者の考えを理解しているので、マッチングやディールがスムーズに進むことが多くM&A成立までの期間がFA方式と比べて短くなるケースが多いです。

・ アドバイザーに支払う費用が抑えられることがある

報酬の総額が大きくなるので、アドバイザーが報酬単価を低めに設定しているケースもあります。

※ M&Aの報酬体系についてはアドバイザーによって大きく異なるため確認が必要

デメリット

・ 利益相反が起きやすい

なるべく最適な条件(譲渡金額や継続勤務する従業員の待遇など)で売却したい売手企業と適正な条件で買収したい買手企業の間に1社のアドバイザーが入り、双方が納得する着地点を探る形で条件交渉が行われるので利益相反が起きやすいです。

・ 相手先を探す範囲が限定される

仲介を行うアドバイザーのネットワークの範囲でしか相手先を探すことができず、相手先を探す範囲が限定されてしまいます。

(2) FA方式の特徴

・ 売手企業・買手企業のどちらか一方に対してM&A支援業務を提供

・ 売手企業・買手企業のどちらか一方のみから報酬を受け取る

・ 1社対複数社で条件交渉が行われる

メリット

・ 利益相反が起きづらい

売手・買手どちらか一方の利益の実現を目指した支援が受けられるので、利益相反が起きづらいです。

・ 条件が良くなることが多い

売手側にとっては、複数の買手候補の中から競争環境を作った状態で条件交渉を進められるため、買手企業の規模・譲渡金額・従業員の待遇など希望を満たす条件を提示する買手候補を選ぶことができ好条件でM&Aを成立させられる可能性が高まります。

・ 相手先を幅広く探すことができる

相手先はアドバイザーが自社で繋がりをもつ会社に限定されないので幅広く相手先を探すことができます。

デメリット

・ M&A成立までに時間がかかることが多い

売手企業の希望条件に近づけるために複数社と条件交渉を行うので、M&A成立までに時間がかかることが多いです。

・ FA報酬が高額になるケースもある

報酬の総額は仲介方式と比べて小さくなるので、その分アドバイザーが報酬単価を高めに設定しているケースもあります。

3.まとめ

以上をふまえると、

・ M&A成立までのスピードを重視する場合は仲介方式がおすすめ

・ より好条件でM&Aを成立させたい場合はFA方式がおすすめ

ということになります。

M&Aアドバイザーを選ぶ際には仲介方式とFA方式のメリット・デメリットを理解したうえで、どちらで取引を進める予定なのか確認いただくことをおすすめします。

※ 仲介方式またはFA方式のどちらかのみ対応しているアドバイザーと案件の内容や顧客に希望に合わせてどちらも対応しているアドバイザーが存在します。

デロイト トーマツ ファイナンシャル アドバイザリー合同会社が運営するM&Aのマッチングプラットフォーム「M&Aプラス」でもM&Aに関するご相談を承っております。状況やニーズに合わせて最適な進め方をご提案いたしますのでもしよろしければご相談ください。

執筆者
デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
イノベーション事業部 FAプラットフォーム
シニアヴァイスプレジデント 宮川 文彦

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