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これさえ知っていれば苦手なタイプも問題なし!?「ソーシャルスタイル」を活用した交渉術

基礎知識・ノウハウ

M&A

M&Aに携わっている専門家の皆様にお聞きしたいのですが、以下のような経験をされたことはないでしょうか。

・ クライアントや相手方アドバイザーとのコミュニケーション全般がうまくいかない
・ 提案内容は良いはずなのに相手に響かない
・ うまく相手の懐に入っていけない
・ いつも面談が今一つ盛り上がらない
・ 何故かわからないが相手から嫌われているような気がする

このような状況が積み重なった結果、売り手と買い手のニーズや金額感は一致しているはずなのにディールがなかなかうまく進まなかったり、いいところまで行ってブレイクしてしまったりなどという苦労をされた経験をお持ちの方は多いと思います。

今回は上記のような状況を減らして面談を円滑に進めていくために有効なコミュニケーション理論をご紹介します。

1.仕事でもプライベートでも活用できる「ソーシャルスタイル」とは

ソーシャルスタイルとは、1968年にアメリカの産業心理学者であるデビッド・メリル氏とロジャー・リード氏が提唱したコミュニケーションの理論です(『Personal styles & effective performance.』Merrill, D. W., & Reid, R. H. /CRC Press.)。

人の言動を「感情を表す/抑える」と「意見を主張する/聞く」のふたつの観点から4つのスタイルに分けて分析し、相手が心地良いと感じる対応を探し、選択する方法として活用されています。人の言動を単純に4つに分けることはできませんが、大まかには誰もがいずれかのスタイルに分類されるといわれています。

ビジネスにおいては直接顧客と関わる営業職やコンサルタント、店舗での販売職などではソーシャルスタイル理論を理解することでコミュニケーションがスムーズになるとされています。最近ではコールセンターのオペレーターなどの非対面ビジネスにも展開されており、組織の生産性向上や社員のスキル開発のため積極的に研修に取り入れる企業も増えてきています。

仕事でもプライベートでもやり取りする相手の性格は変えることはできませんが、それならば自分のコミュニケーションスタイルを相手に合わせてあげることで、物事を円滑に進めていくことが可能になります。これまでは何となくやりづらいなと感じていた相手とも、この理論を理解して実践することで、明日から急にコミュニケーションが円滑になるかもしれません。

2.4つのスタイル(図)

では、具体的にどのようなスタイルがあるか見てみましょう。ソーシャルスタイルは「感情」「意見」の強弱によって以下のような4つのスタイルに分けられます。

ソーシャルスタイル理論

はじめにお伝えしておきますが、この4つのスタイルの中で良い悪いとか優劣は全くありません。あくまで個性のようなものであり、また職場や上司が変わったりプライベートの生活環境の変化に伴って自分のスタイルが以前と変化していくケースもあります。

ただし、仕事においてはその業種や業務内容に関して、向き不向きの適正は少なからずあるので、就職活動の際や社内での異動、チームビルディングなどにおいては非常に参考になります。

それぞれの相性に関しての相性についてですが、まず同じスタイル同士はもちろん相性抜群です。次に上下左右に位置するスタイル同士の相性は良くも悪くもなく普通で、最後に最も注意すべきが対角線上に位置するスタイル同士です。ここは基本的に好みのコミュニケーションスタイルが真逆なので、例えば上司や部下の関係になったりするとお互い常にストレスがあって、何をやってもうまくいかないかもしれません。

実際のソーシャルスタイルの活用の手順は以下の通りです。

① まずは自分のコミュニケーションスタイルを知る(外部の関連サイトなどから無料診断を受けてみてください)

② 面談時の初期的言動や事前情報から相手のコミュニケーションスタイルを推察する

③ 自分との違いを知り、相手のスタイルに合わせて心地いいコミュニケーションとなるような言動を行う

ポイントはいかに早く相手のスタイルを見抜き、それに合わせて臨機応変にその場で対応できるかであり、図1の内容をしっかりと理解して、実際にロールプレイングなどの練習も行うとよいでしょう。

3.面談での具体的な活用方法

ここでそれぞれのスタイルへの面談時における基本的な対応について簡単に紹介します。

● ドライビング

無駄が嫌いなので不要なアイスブレイクは避けて、「結論」から話すようにしましょう。面談の目的、落とし所、所要時間なども最初に確認しておくのがおすすめです。負けず嫌いで目標達成意識が高く自分で物事をリードしていきたいタイプなので、意思決定の流れなどは相手に委ねましょう。面談途中で、「結論は何ですか?」とか「本日の面談目的って何でしたっけ?」と不満げに聞かれたらこのタイプかもしれません。

● アナリティカル

基本的には面談中も声の抑揚や身振り手振りが少なく、相手の興味や反応がわかりにくいところがあります。このタイプは詳細なデータ1つ1つから適切な判断を下すのを好むので、話の内容や資料にも根拠のある数字などをしっかり盛り込むことが重要です。場を盛り上げようと身を乗り出して身振り手振り情熱的に話しても逆効果になる可能性があるので気を付けましょう。

● エクスプレッシブ

このスタイルは創業社長やリーダータイプに比較的多く見受けられます。感情表現が豊かでノリがよく、大きなビジョンを語ったり新しいことにチャレンジすることを好みます。反面あまり細かい話は好まない傾向があり、特に面談の初めなどはアイスブレイクをしっかり行い場を盛り上げてから本題に入るのが良いでしょう。人から認められたり注目を浴びたいタイプでもあるので、過度にならない程度に褒めることも効果的です。併せて身振り手振りや声も大きいので、相手のリアクションに合わせて同じように振舞うことも面談中は意識しましょう。

● エミアブル

一般的には「いい人」と捉えられることが多いです。相手の気持ち、周りとの協調を何より大切にするので、基本的に他の人の意見に賛同しやすく、本音では反対していてもその場ではなかなか言い出すことが出来ません。従って商談が順調に進んでその場で契約までこぎ着けても、後日キャンセルになることがあります。面談の際はあくまで友好的な空気を保ちつつ、一方的に話さずにうまく相手の本音を引き出しましょう。契約の際も強引に押さないように注意して、不安や懸念点を丁寧に払しょくすることが信用にも繋がるので重要です。

相手のスタイルを早く見抜くためには、面談に臨む前にWEBサイトやSNSなどから情報収集を行い、出来る範囲で相手のことを知ることも重要です。実際の面談ではある程度やり取りしないとすぐに見抜くのは難しいかもしれませんが、声の抑揚やジェスチャーの大きさ、相手の話す内容などからスタイルを判断して、その後は相手に合わせたコミュニケーションを取ることを意識しましょう。

2回目以降の面談ではアイスブレイクの有無、資料の内容や面談の流れも相手の好みに合わせることができるので、より円滑な面談になることが期待できます。

今回は主に対外的な面談などでのケースをお伝えしましたがソーシャルスタイルは、会社の同僚やチームメンバー、友人、家族に対しても円滑なコミュニケーションを行ううえで有効な理論です。

最後に改めて、ソーシャルスタイルにおける4つのスタイルに優劣はありません。

ただし強いて言えば、最も優れたコミュニケーションスタイルとは、「相手に合わせて自分を変えられる」ことだと思います。

皆さんも苦手だと思っている人に対して、是非この理論を実践してみてください。

執筆者
デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
イノベーション事業部 FAプラットフォーム
シニアヴァイスプレジデント 宮川 文彦

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