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企業価値評価にも用いられる指標「PER」とは

基礎知識・ノウハウ

M&A

M&Aの検討を進める際に企業の「PER」という指標に着目にする機会があります。今回は「PER」について解説していきます。

1.PERとは

「PER」とは「Price Earnings Ratio」の略で、「株価収益率」と訳され、対象企業の株式が収益の何年分まで買われているかを表している指標です。一般的に、業績面から見た株価の「割安・割高度」を図る材料として用いられ、以下の計算式で求めることができます。

PER(倍) = 時価総額÷当期純利益

     = 株価÷一株当たりの当期純利益

例えば、株価が2,000円、発行済み株式総数100,000株、当期純利益1,000万円の企業のPERは、2,000円×100,000株÷1,000万円=20倍 と算出することができ、この企業に投資した金額は、20年分の利益で回収できるという判断をすることができます。

2.割高/割安の基準とは

では、PERがどれくらいの水準であれば、割高もしくは割安と判断できるのでしょうか。一般的には、日経平均株価もしくはTOPIXの平均PERがひとつの目安とされています。当コラム執筆時点の日経平均株価予想PER※は約22倍、TOPIX予想PERは約25倍ですので、これらの数値を上回るPERとなった場合は、市場全体と比して割高であり、下回る場合は割安であるといえます。

PER によって、より適切な投資判断をするためには、業種を絞ることが重要です。業種別予想PERを分析することで投資対象企業の株価が、同業種もしくは類似業種と比較し割高なのか、割安なのか、または適正な投資金額を設定しているかを検証することができます。

例えば、先述の通りTOPIXの予想PERは約25倍ですが、下記グラフによると「建設」は約12倍となっているため、建設業のうちPER25倍の企業に対して投資をする場合、市場全体としては平均的ではあるものの、業種としては「割高」な対象先であると判断することができます。

※予想PER:当期予想純利益を用いて算出されるPERのこと

図表PER

3.PERによってわかること

PERは割高/割安の判断材料となるほか、投資対象企業の将来性を計る指標としても用いられます。株価は将来に対する期待値を織り込むため、一般的にPERが高い企業は、成長が見込めると市場に判断されており、PERが低い企業は成長が鈍化すると判断されている傾向にあります。

ただし、PERによる投資判断には注意点も存在します。それは、PERが事業自体の収益力を表す「営業利益」ではなく、外的要因や一過性の要因を内包している「当期純利益」によって算出される指標であるため、必ずしも本業の業績に連動するわけではないという点です。投資判断を行う際は、PERと併せ、財務内容や組織体制、ファンダメンタルズなどの多面的な視点を用いることが肝要です。

4.M&Aの企業価値評価におけるPERの役割

M&Aを検討する際にも、PERが活用される場面があります。例えば、企業価値評価の算出過程でPERが用いられることがあります。

企業価値評価のうちマーケットアプローチの一つである「類似会社比較法(マルチプル法)」では、譲渡対象会社と類似した上場企業の財務数値などを用いて、企業価値評価を算出しますが、根拠となる指標の一つとしてPERを使用します。「類似会社比較法(マルチプル法)」では、ピックアップした譲渡対象企業の類似上場企業からPERのレンジを設定し、譲渡対象企業の当期純利益を乗ずることで企業価値評価を算出します。

通常、企業価値評価を行う際は、類似会社比較法以外の複数の手法を用いて検証を行います。実態に沿った企業価値評価を実施するためには、知識と経験を備えたM&A専門家へ依頼をすることが非常に重要です。

「M&Aプラス」には、様々な業種に精通したアドバイザーが1,000名以上集結しています。第三者承継やM&Aに関して、譲渡価額目線や投資目線に悩まれた際は、まずは当社までお声がけください。当社のネットワークを通じ、より公正・公平な条件下でのM&A検討機会の提供が叶えば、この上なく光栄です。

執筆者
デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
イノベーション FAプラットフォーム
シニアアナリスト 牟禮 貴史

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