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他業種からのM&A市場への参入障壁を考える

基礎知識・ノウハウ

M&A

ここ30年ほどで、日本の中小M&A市場は大きく拡大しています。そして市場の拡大とともに、「ブティック」と呼ばれるM&Aの専門会社のほかに、これまでM&Aに関わってこなかった様々な業種がアドバイザリー業務に取り組むようになってきました。

M&Aアドバイザリー業務の参入障壁は低いのでしょうか。

決してコモディティ化できないビジネスのため、規模のメリットが比較的はたらきづらく、個人での参入が可能なこと、あるいは事業会社や金融機関にとっても、担当者を数名アサインすればビジネスとして稼働が可能になることも理由として挙げられるでしょう。始めるにあたっての資金もほとんど必要ありません。また、様々な議論がある中で、現状はM&Aアドバイザリー業務に、個人の資格も法人としての認可や届け出も必要ありません。

整理していくと、最も大きな参入障壁はやはり、「M&Aに関わる知識・スキル・経験が必要になること」ではないでしょうか。では具体的にはどのようなスキルが必要なのかを考えてみましょう。

■ 顧客掌握スキル

バイサイドとセルサイド、どちらのアドバイザーを担当する際でも、ディールの最初から最後まで必要となってくるスキルです。たとえ豊富な知識や見識があったとしても、自らの顧客に信用してもらえないと意味がなくなってしまいます。顧客とのパイプとともにこの顧客掌握スキルを持っている個人や法人が、異業種参入を検討することが多いのではないでしょうか。特に、経営者と直接対話する機会があり、廃業や承継について相談を受けることが多いからはじめる、という場合が多いように感じます。

■ 決算書を読み解く能力

対象会社がどのような会社かを把握し、ディールが成立しうるかについて検討するため、数字の面から読み解いていくことは、ディールの一番はじめに必要なプロセスです。これを得意とする会計事務所・銀行等金融機関は、既にM&A業務に取り組まれている割合も高いです。

■ ビジネスについての理解

M&A後のシナジーを検討したり、本当に買収対象として相応しいかを判断したりするのに、対象会社や買手企業のビジネスについての理解が必須になります。対象会社の属する業界に詳しくない場合、ディールに関わりながら知識を深めていく必要があります。業種特化型のコンサルティング会社などが得意とする分野です。

■ 企業価値評価の能力

売却/買収価格が適切かどうかを、DCF法やマルチプル法など企業価値評価の基礎的な手法を使いながら総合的に判断する能力です。決算書を読み解く能力や、ビジネスについての理解も関係しています。日頃から投資判断についての助言をしている証券会社が得意とするところかと思います。

■ 法令や規制についての理解や、契約書を作成するスキル

ディールを完了させるのに必須な能力です。契約書などは契約締結までには弁護士へ確認を求めることになりますが、弁護士確認にこぎつけるまでに前さばきができなければ、スムーズなディールにならないでしょう。

■ マッチング相手を見つける能力

売却/買収のニーズを自社顧客からつかんだ後、そのニーズにマッチングする逆サイドのニーズを探す能力です。大きな顧客基盤を持っている場合、案件のマッチング先を自社の顧客の中で見つけるという場合もあるでしょう。自社顧客の中で見つからない場合は、同業者の横の繋がりの中で案件についての情報交換を日頃からしていたり、同地域の他業態とM&A業務に関わる提携をしていたりすることが重要となってきます。

地域や業種を横断して相手探しをすることが必要なディールなど、マッチング相手を見つけることができずに困った場合、M&Aプラスなどのマッチングプラットフォームが助けになるかと思います。

DTFAの提供するM&A・事業承継プラットフォームではM&Aプラスに限らず、必要なスキルを身に着けて他業種から参画したい方をサポートする仕組みやサービスが整っています。M&A業務への取り組みを検討したい方はお気軽にお問い合わせください。

執筆者
デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
イノベーション FAプラットフォーム
アナリスト  日野原 未葉

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