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社会保険労務士事務所がM&A関連業務に取り組むべき理由と業務内容について(前編)

基礎知識・ノウハウ

M&A

M&Aの取引を成立させるには、会計士・税理士・弁護士・社会保険労務士・金融機関など様々な専門家の連携が必要です。

しかし、社会保険労務士事務所の中で、M&A業務に実際に取り組んでいる事務所は非常に少ないのが現状です。

そこで今回は、社会保険労務士事務所がM&A業務に取り組むべき理由と、具体的な業務内容について前編・後編に分けて解説をしていきます。

1.社会保険労務士事務所がM&A業務に取り組むべき理由

ここでは、社会保険労務士事務所がM&A業務に取り組むべき理由について3つの観点から解説していきます。

(1)マーケットが拡大している

近年、ビジネス拡大の選択肢の一つとして一般的になってきたことや、経営者の高齢化に伴う後継者不足を要因として、M&Aの成立件数は増え続けています。

日本におけるM&Aは1999年に初めて成立件数が1000件を突破して以降、盛んに行われるようになり、2007年には成立件数が約2700件に達しました。しかし、2008年のリーマンショックの影響で成立件数は減少に転じ、東日本大震災が発生した2011年には約1700件まで減少します。しかし、翌年からM&A成立件数は再度増加に転じ、2019年には過去最高となる4000件以上のM&Aが成立しました。2020年はコロナの影響が心配されましたが、10月までで3000件以上のM&Aが成立しており、大きな減少傾向は見られないようです。

また、2025年には245万人の経営者が70歳以上になると言われており、後継者不在による事業承継の選択肢として第三者へのM&Aを選択する企業は増加することが予想されます。

以上から、今後少なくとも5年~10年間はM&Aのマーケットは拡大を続けることが予想されます。

(2)報酬単価が高い

M&A案件において、人事労務の専門家である社会保険労務士事務所が強みを活かすことができる業務が、人事・労務デューデリジェンスです。この労務デューデリジェンス業務の報酬については、一般的な社会保険労務士事務所がメイン業務として取り組んでいる労務顧問や給与計算業務と比べると、非常に高いものになっています。

具体的な調査内容や企業規模によって大きく変動しますが、最低でも30~50万円、高いときは100万円以上の報酬になることもあります。もちろん、労務デューデリジェンス業務は専門性が高く、業務にかかる時間も多いので、収益性の面で労務顧問や給与計算業務よりも必ずしも優れていると言うことはできませんが、1時間当たりの単価でみても2万~5万円程度の報酬を得ることができるケースが多いようですので、時間当たりの単価を上げたいとお考えの社会保険労務士事務所はM&A業務に取り組んでみるといいのではないでしょうか。

(3)競合が少ない

年々競争が激化してきている士業業界において、事務所の強みを作り、他事務所との差別化を図ることの必要性を感じていらっしゃる方も多いかと思います。

前述のとおり、M&Aに関連する業務に現在取り組んでいる社会保険労務士事務所は非常に少ないです。他事務所に先行してM&A関連業務に取り組むことで、ご事務所の強みの一つにしてみてはいかがでしょうか。

以上、(1)マーケットが拡大している (2)報酬単価が高い (3)競合が少ないという理由から、社会保険労務士事務所の皆様にも事務所の新しい収益源、そして顧客への新たな付加価値提供サービスの1つとしてぜひM&A関連業務にチャレンジしてみていただければ幸いです。

次回、後編にて社会保険労務士事務所が取り組むべきM&A業務の具体的な業務内容について解説いたします。

執筆者
デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
イノベーション FAプラットフォーム
シニアヴァイスプレジデント 宮川 文彦

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